142.豊かな感性

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大学生のひとが書くレポートを添削するときによく出てくるフレーズで
「感性を豊かにしてうんぬん」というものがある。

図工の時間の授業案をつくる、という課題のレポートなのだけれど、
制作のある段階にくると「感性を豊かにして〇〇をさせる」と
書くひとがすごく多いのだ。
それにどうしてもひっかかってしまう。

まるで、どこかにスイッチのようなものがあって、
「よし!今から感性を豊かにするぞおー」と切り替えられるような
イメージを持ってしまうからだ。

第3者が誰かの「感性を豊かにさせる」ことはできないと思う。
「感性が豊か」かどうかは目では見えないし、判断基準もないからだ。

それに、だれかの感性を豊かにさせる、
なんて、それはなんだかおこがましいよなあとおもう。
そうなってくれるといいなあ、と期待して、
「そのひとなりの感性を練り上げる、ベース作りにちょこっと協力する」
ことはできると思っている。

けれども、それで相手がかならず「感性が豊かになる」かどうかは
わからないし、
本人にとってはよけいなおせっかい、かもしれない。

そもそも感性ってなに、という話がある。
感性は、昔からみんなが考えてきた、
いろいろな捉え方と切り口がある言葉だ。

含みの多い言葉なので、学問では定義が必須になるし、
真逆の方向で話をふわっとまとめるために便利に使われたりもする。

辞書だと「物事を心に深く感じ取る働き」
「外界からの刺激を受け止める感覚的能力」と説明されているけれど、
ふつうの感覚としては、
ものごとをよく感じることを「感性が豊か」っていうのかなと思っている。

はらはら落ちる桜の花びらを「いっぱい落ちてるなー」と眺めるのか、
「雪みたい」と思ったりするのかの違いと言ったらよいだろうか。

個人的には
「感性」はふたつの軸でできてるんじゃないかなあと考えている。

ものごとを

●「どうまとめているのか」
●「どうえらぶのか」

が感性なんじゃないかと思うのだ。

同じものごとを見たり聞いたりしても、
そこからより沢山のことを感じ取って自分の判断、
まとめかたに使っていくことができるひと、
その判断を意識しないで一瞬でやってのけるひとが
「ゆたかな感性があるひと」なのだと感じている。

では、どのようなことが「ゆたかな感性」につながるのだろう。

これが正しい答え、とかではまったくないと思うのだが、
今までの経験から3つくらいのことは言えるなあと思っている。

①身体の感覚そのものを鋭くすること

たくさんの感じることがあれば、
「どうまとめるか」のバリエーションも増える。
もともと感覚が鋭い人ももちろんいるけれど、
脳の神経細胞は使えば使うほど発達するので、繰り返しでけっこう磨ける。

②入れる情報を増やす、体験や経験をたくさんすること

経験はプライスレス。。じゃないけれど、
そのひとなりの「まとめ」を練り上げるために経験って大事だなあと思うし、
これは様々な人がそう思っていらっしゃるだろうなと感じる。

③繰り返したり、ねかしたりする場所と時間を設けること

これが感性が豊か、の秘密なのではないかなと思っている。

教育熱心なおうちの方がいろいろな経験をさせてあげようと、
ちびっこのスケジュールをびっしり埋めていたりするときがある。

その本人の話を聞いたり様子を見たりしていると、
体験の数が多すぎると、体験を流していくというか、
消費するようになる感じがするのだ。

沢山のメニューを楽しむけれど、それを深く味わったり、
他と連動させたりする時間や場はない。
メニューを作るのではなく消費するので、
「ほかにおもしろいものないの?」と相手に聞いてくるようになる。

感覚にしても同じことが言えて、いくら五感が鋭くても、
それをつかっていく力、ゲットした感覚情報を
上手に統合していくことができないと、
それはただの沢山の情報の羅列になってしまう。

実際にそういう病気はあって、
そういう場合は積み木のブロックが心にたくさんあるだけで
形がつくれないというか、
見えるもの、聞こえるものの情報のばらばらの状態があるだけで、
そこに何かの実感や意味は見出せないし
身体をうまくつかうことができない。

逆に五感が鋭すぎるひとは上手にコントロールする術を学ばないと、
例えば学校に行っただけでへとへとになってしまう。
情報量が多すぎてパンク気味になってしまうからだ。

体験も、感覚も、使ってから、じゅうぶんに寝かせてあげて、
熟成するまで待つ。

そうするとそのひとなりの接続やまとめかたができてきて、
その「自分オリジナルまとめかた」を使うことでさらに
バリエーションが増えたり、内容が磨かれていく。

そんなイメージなのではないかと思うのだ。

日々、そのようなことを感じたり考えたりしながら
暮らしているせいかもしれない。

もっとあっさり流していいのだろうけれど、
レポートを添削するたびに「感性をゆたかにしてうんぬん」が沢山出てきて、
毎回ひっかかってしまうので、
そのフレーズがでてくるとたいへん厳しく添削するようになってしまった。

なんかすみません。。。。と、ちょっと思う。