138. はさみん

アトリエでは制作中に手を動かしながらよもやま話をすることが多い。
何がどういうルールでそうなるのかはわからないけれど、
波がひいては返すように、皆がしん、とそれぞれの制作に没入するときと、
手を動かしながら他愛のないよもやま話になるときが交互に入り交じる。

先日の土曜日のちびっ子クラスでは、「この道具は何歳だと思うか」で盛り上がった。
細い針金をハサミで切ってしまうひとに
「ハサミじゃなくて、ニッパーで切るのだ」と伝えようとしたことが話の発端だった。

その日は、絵画制作をするひとと手芸のペーパーフラワーをするひと、
樹脂で小さな立体をつくるひとがいた。
そのなかでペーパーフラワーをつくっているひとが、
花びらをまとめあげるために使う針金をハサミでどんどん切ってしまっていた。

「○○ちゃん、針金はねハサミで切っちゃだめです。ニッパーわかる?アレで切らないと」
「ニッパーはわかるよ。場所もわかる。
でも道具置き場まで行くのめんどくさいんだもん。ハサミで切れてるし」
「いや、切れるは切れるんですが、
彼らは針金を切るようには作られてないので痛んじゃうんですよ」
「彼らって?」
「いま○○ちゃんが持ってる山田くんですよ」
「山田くん?」
「はさみの名前」
「何それ」
「私の中では30代男性なんですよねそのハサミ」
「なんで」
「頑張って働いてる!って感じが」

えー、と言いながら周りのひとたちも
「自分は何歳だと思う」ということを口々に言いだした。
50代男性から2歳赤ちゃんまで色々な説が出たが、
そのうち、件の針金を切っている子がきっぱりと言った。

「わかった。このハサミは女子高生だよ」
「そのココロは」
「だってさ、アトリエって17年?やってるんでしょ?
このハサミは最初からあるんでしょ。だったら17歳」

おおー、なるほどー。と思わず皆が納得してしまった。

「それにこの、持っている所がまるっとしていて、
切る所がシュッてなった形の感じが女子っぽい」

おおー!さらになるほどー。

「じゃあ、はさみんはJKですね」
「じぇーけー?」
「はさみん?」

「J(女子)K(校生)ですよ。今、はさみんと名づけました」
「え、じゃあ山田はさみん?なの?」
「名字はわからないんですけど」

「多分ですね。はさみんはいま、こんな感じだと思います」

ちょ。。。まじでありえねえわー
うちらワイヤーとか切るのマジあり得ないんだけどー
お肌が荒れるんですけどー
ほんとやめてほしいんだけど

「。。。。。。。。。」

皆優しいのではさみがしゃべるわけがないじゃないかと指摘する人もなく、
その後は各自がそうだと思う年齢と人柄での
はさみんのアテレコ大会となった。

ペーパーフラワーを作っている子は笑いながら、
「ありえねえとか言われたくないわー」とはさみんの口まねをしつつ、
今度はニッパーを使っていた。