130.きれいな顔

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木曜日のちびっ子クラスは大人しい女の子が多いクラスで、
いつも静かな時間が流れている。

そんな女の子のひとり、なぎちゃんはかわいいものが大好きだ。

アトリエでのなぎちゃんは口数は少ない。
話したい事がないわけではない。
ごく親しい人以外に、気持ちを言葉にして押し出すのに
少しエネルギーが要るのだと思う。
だから、話には表情で参加しているし、大好きなものの話題になると、
ためらいを忘れてぱあっと話しだしたりする。

なぎちゃんは今、自分でデザインした服を作っている。
今回は実際にある服を分解したりつなげたりして服にしてもらっている。
これをすると服のつくりがなんとなく分かるので、
一枚の布から服を仕立てることが理解しやすくなるからだ。

なぎちゃんが今回デザインしたのは、爽やかな白いスカートと、
ブルーのシャツを縫い合わせたワンピースだ。

ブルーのシャツは大人のサイズなので、
ウエスト部分を手縫いで縫い絞ってプリーツが出るようにしてある。
デザイン画はいつも使っているクロッキー帳に描いた。

なぎちゃんの、イメージを形にしようとする気持ちの強さはたいへんなものだ。
すごいよなあ。。。といつもちょっと感動してしまう。

例えば、1時間半かけてつなげた部分のプリーツが
偏って縫い上がってしまったことに気がついたときがあった。
ウエストの片側にはギャザーがたっぷりと入り、
もう一方はほとんどプリーツが入らないシャツになってしまったのだ。

それに気がついたなぎちゃんはちょっと口を尖らせて黙考したあとに
「やりなおす」とぽつん、と言った。

その後2時間かけてミシンの糸を切ってスカート部分とシャツ部分を分離させ、
再び手縫いでシャツのプリーツを作り直した上でミシンで縫い付け直したのだ。
大人だってギブアップしそうな、地味な作業である。

今は形は出来上がったワンピースに色々な装飾を施しているのだが、
ここでも驚異的な粘り強さを発揮している。
スカートにつけたい、ネコのアップリケの口元の表情が、
どうしても布ではできないからと手縫いの反返し縫いをまず練習して、
刺繍でくるん、と口角のあがったネコの口元を作ったのだ。

言葉ではうまく伝わらないかもしれないけれど、
ほんとにすごいよなあ。。。と思う。

学校の成績にかかわる訳でもないし、
誰かに褒められたいというのだけではこんなに集中は続かない。
本当に、こういう服があるといいな、と思って、
作りたいと思っているからできることなのだと思う。

その気持ちでなぎちゃんはミシンを覚え、半返し縫いを覚え、かがり縫いを覚え、
きっとまだまだ様々な技術を覚えていくのだと思う。
そうして覚えたことはきっと、彼女の身に付いて、
次回以降の彼女の制作を助けてくれる。
頭ではなく、気持ちと身体で覚えていったものだからだ。

膨大な手間をかけたネコのアップリケは、
先日ついにスカートに縫い付けられはじめた。

さすがにこれで終わりにするかな、とおもっていたのだが、
次は「ウエスト部分にハートのボタンをつける」のだそうだ。
材料はすでに選び済みである。

なぎちゃんは焦らず、デザイン画を見ながら制作を進めている。
その顔は本当にきれいだ、と思う。