129. 続ける

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先日、PCを持って、最寄り駅の駅前にあるコーヒーショップで仕事をした。

レジで注文をとってくれる女性に見覚えがあったので瞬きをしたら、
以前私立の学校で授業をしていた子だと分かった。
向こうもすぐ分かったらしく、もう大学2年生です、と照れ笑いをした。

ご縁があって授業をさせていただいている私立学校は一貫制の大学部まである学校で、
いつの間にか10年近く授業をしているため、こういうことがよくある。

「ねえねえ、おかあさん。あっ!間違えた、せんせい」
なんて呼び間違えをしていた男子が180センチ近い身長になっていて、
女の子と手を繋いでいたりしているのを目撃して大衝撃を受けたこともある。

レジの女性は彼女が小学五年生の時に美術の授業をしたので、何年ぶりになるだろうか。
久しぶりですね!と言葉を交わしたあと、コーヒーカップに口をつけながらきびきびと働く彼女を見た。
すらりとしてきれいだ。

入り口で聞き覚えのある声がするので目をやると、
パーカーを着た男性とジーンズ姿の女性のふたり連れが入って来た。
女性のほうは髪が長く、長い睫毛に薄く透けた茶色の瞳が特徴的だ。
これまた、五年生と六年生の時に授業をした女の子だとすぐ分かった。

当時の彼女は大変ボーイッシュだったので、外見は激変していたのだが、
声の響きと会話のテンポ、特徴のある瞳ですぐわかった。
久しぶりに見る彼女はすがすがしく健やかな魅力を全身から発散していて、
見ていてすごく嬉しくなった。

美術の授業は制作と作品があるためか、
心の癖、というかその人の雰囲気というものを身体が覚えていて、
相当年数が経っていても、あ、あの時の子だ、とわかることが多い。

にやにやしていたら向こうも気づいて、肩をすくめて笑った。

おそらく恋人であろう人と一緒なのが照れくさいようだ。
店を出る時に「きれいになりましたねえ!」と話したら、
ありがとうございます!と、ぱあっと花が咲くように笑った。

一瞬だったけれど、なんだか嬉しい時間だった。