127. ももちゃんの受験

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アトリエではあんまり受験デッサンだけをお受けする、ということをしていない。

小さい頃からアトリエに来ていて、高校生になったひとたちのなかに、
美術大学を受験する人が出ると、お手伝いしますよ!といったスタイルを取っている。

彼等は小さい頃からクロッキー、といって短い時間で人物を見て描く、という
ことを毎回のアトリエの制作時間にしてきている。だから、ものを見る事には慣れている。

どこを見るひとなのか、どのようなところに注目するたちなのかは、枚数を重ねてきた
クロッキーを見ればわかるので、デッサンのレッスンはそれを元に個々でメニューを組んでいく。

受験デッサンで見られるポイントというのはある程度は決まっている。
それをクリアしつつ、本人の持ち味を維持することを目指すのが
アルケミストでの受験デッサンの基本だ。

受験や大学は数年の話だ。卒業してからの制作や人生の方が、ずうっと長い。
受験のために必死になりすぎて、
本人が持ち味がすり下ろされてしまったら勿体ないよね、と思うのだ。

ももちゃんはおおらかなものの見方と、
持ち前の知的な理解力が面白いバランスで入り交じったデッサンをするひとだ。

実技試験のひと月ほど前、今年の大学受験生に
アトリエの仲間やスタッフが一本ずつデッサン用の鉛筆を削り、
プレゼントすることにした。
今年は美術系の大学を受験するももちゃんと、
工学部系の大学を受けるつっちーのふたりに鉛筆を贈った。
さとちゃんという女子も受験生だったが、彼女はすでに受験は終わっている。
来春から晴れて美大生に決まっているので、鉛筆は削る側だ。

ももちゃんへは、男性陣の青木っくすが
革でペンケースを縫ってくれ、そこに皆の削った鉛筆を入れて贈った。
つっちーへは、女性陣の深谷さんとさとうが
ペンケースをミシンで縫い、お手製のバッジをつけたものに鉛筆を入れた。

鉛筆が受験で実際に役に立つかは分からない。
ただ、皆が彼等のことを気にしている、ということを、
触れるかたちで伝えたかっただけだ。

ひとりひとり、鉛筆の削り方は違う。

(おさだはめちゃくちゃな削り方だなあ)

(すごく先を尖らせるのがあおきっくす)

といったように、触って、少し笑ってもらえたらいいなと思ったのだ。

ももちゃんのすべり止めは先日合格となった。

ふたりともまだ本命の結果は出ていない。

上手く行くとよいなあ、と思っている。