123. すいか割り

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アトリエでは毎年、気温が高い8月の土曜日にスイカ割りをするのが恒例になっている。

アトリエの前にはほんの少し駐車できるスペースがあるので、
そこをつかってスイカ割りをするのだ。

この日は30分ほど早く制作を切り上げて片付けをして、部屋に大きなビニールシートを敷く。
思いっきり食べて、思い切りこぼしても大丈夫なようにだ。

あとは道路ですいかが転がっていかないように、
染め物用の大きなアルミ鍋にスイカをどん、と入れて、
材料の角材をみつくろって消毒すれば準備は万端だ。

毎年参加しているちびっ子は
「棒はこれでいい?」
「消毒終わった?」
などなど、てきぱきと準備をしてくれる。もう慣れたものだ。

アトリエアルケミストのスイカ割りで、
スイカを割ることより皆の関心を集めるのが「今年は鍋がどのくらい無事か」ということだ。

アトリエの、スイカ割り兼染め物用の大きなアルミ鍋は、
毎年のようにみんなが振り下ろす渾身の一撃を一身に受けてふちがボコボコにへこんでいる。
取っ手はとっくに吹っ飛んでしまっていて、もうついていない。

今年は小学生から中高生、大学生までが8人ほど集まっただろうか。
スタッフを含めて十数名がジャンケンで順番を決め、
タオルで目隠しをして、10回ぐるぐるその場で回ってから順にスイカを割って行った。

「 右!右!」「あーもうちょっと後ろ、下がって!」とか、
思い思いにナビをしていくのを見ると、
ああ、夏だなあと思う。

みんな正直にナビをするので、大きくはずれる人はいなかった。
しかし、力が足らないのだろう、当たることは当たるのだが、なかなか割れない。

そのうち、中学1年生のけんと君の番がきた。
彼はクールな物腰とは裏腹に、恐ろしくパワフルな作品を作るため、アトリエでも一目置かれている。
皆からは「けんちゃん」と呼ばれている。

「けんちゃん、左!左!」
「ちょっと下がって!」

けんと君はぴたり、と静止するとやにわに角棒を振り下ろした。

「あーー!!」

丈夫なはずの角棒はすいかから逸れて地面に当たった。
アスファルトの地面によほど強く当たったのだろう、
角棒の先は鈍い音とともに、粉砕してしまったのだ 。

「けんちゃんどれだけ力があるんですか!」
「うわー角材、粉々だ。。。」
「鍋にあたらなくってよかったよねえ」

結局、小学5年生男子のたくと君が、新たに用意した角材でスイカをまっぷたつにした。
そのあとはみんなで大きく切ったスイカをどんどん食べた。

大きなスイカがまるまるひとつ、一気に無くなっていくさまはなんだか壮観だ。

何故か今年は全員がナイフとフォークを使って食べていた。
正座までしている人もいる。

「なんで?」と聞いても、本人達もわからないらしく、「さあ」と要領の得ない答えが帰ってきた。

今年は猛暑が続き、連日35度を超えている。
暑いとみんな、ちょっとづつ変になるのかもな、とスイカにかぶりつきながら思った。