121. シトロン

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月曜日のアトリエ終了後、いただきもののお菓子を食べることにした。
ふたを開けると、箱の中にはカラフルなマカロンがころころと並んでいる。

のんびりが身上のアトリエだが、
開講準備から制作時間、後片付けのクローズ作業までスタッフ同士が話し込む、ということはほとんどない。

別に不仲なのではない。
全員、愚直なほど真面目に仕事に取り組むからだ。

オープニングは集中して、大忙しで働く。

階段に落ちた落ち葉の掃き掃除から玄関の水拭き、
花を飾り、トイレや廊下の掃除、お茶淹れ、その日の制作の下こしらえ等々、
きびきびと2人掛かりで進めても1時間はかかる。

月曜日は女性メンバーの松っちゃんと男性メンバーのあおきっくす、私の3人で担当しているので
他の曜日よりやや作業量に余裕があるが、のんびりできるほどではない。

雑巾を畳んだり、材料を整頓したりしながら
「○○ちゃんは風邪でお休みです」とか、「○○くんは今日どうしよう?」等々の
業務連絡的な事を話しているとあっという間に開講時間になる。

アトリエの制作中になれば制作をしている方やちびっ子との会話が中心になるし、
後片付けのクローズ作業は主婦のスタッフの方もいらっしゃるので、
可能なかぎり早く終わらせてあげたくて、やっぱり大忙しになる。

たまにこのように終わってからほっとする時があって、
そういう時によもやま話に花が咲く。

土曜日は昼休憩があるので、休憩中にくだらない話もできるが、
平日にこういった時間が持てるのはなんだか贅沢で嬉しい。

あまり馴染みのないお菓子だったのだろう、
女性メンバーのまっちゃんがひとつつまんでいる横で、
男性メンバーの青木っくすがお茶を淹れながら箱を珍しそうにのぞきこんだ。

「これなんですか」

「いただきもののマカロンです」

「マカロン。。。初マカロンです。何味なんですかね」

「マカロン味なんじゃないですか?」

「。。。。。いや、色がみんな違うじゃないですか。」

「ああ、そういう。。ええと、箱のなかに確かお品書きがはいって。。あった、これです。」

青木っくすはお菓子の説明が書いてある小さな紙片をじっと眺めた。

「ピスタチオ。。。って何ですか」
「ナッツの種類だと思います」
「フランボワーズって」
「いちごの親戚だと思いますよ」
「。。シトロンは?」
「柑橘系だから、レモンとかのことですね」

「じゃあこれ、チョコ、ナッツ、いちご、レモン、ってことですよね」

「まあそうですね」

もぐもぐ口を動かしながら、青木っくすは「これからはレモンをシトロンっていいます」と言った。

「あ、そこのサンマにシトロン絞って、とか言うことにします

ああ、今日はおしゃれになってしまった。。とつぶやいて青木っくすは帰っていった。

さんまにシトロンを絞るのがおしゃれなのかどうかはよくわからないけれど

やっぱりよもやま話はおもしろいな、と思う。

こういう話が贅沢で楽しいのだ。