115. 会話

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休日出勤のはずだった夫が休みになったので、
二人で散歩に行くことにした。
一緒にのんびりぶらぶら歩くことは、とても贅沢なイベントだと思う。

忙しいとき、家では二人ともあまり沢山話さない。
夫は会議で、私はアトリエで、会話に使うエネルギーや神経は充分使っているからだ

一日の終わりに、今日なにがあったよ、とか、そこの角の梅が咲いた、とか、
ぽつん、ぽつん、と話してあとはまた、静かな空間に戻っていく。

でも、散歩になると違う。

同じものを見て、ゆっくり歩いていると会話がころがりはじめる。

内容のある話はあまりしない。
なんでもないことを、小咄のようにどんどん内容を膨らませて話して遊ぶことのほうが多いからだ。

「そういえば、わたし一昨日の朝にUFOをみましたよ。」

「え?」

「最初は飛行機雲だと思ったんです。でも朝の5時半だし、すごく近いのに音がしないのね。
それで(あれ?音がしない?)と思って見直したら、途中で飛行機雲がふっと消えたんですよ。
あれはUFOだね。」

「・・・・・それはね、違うね」

「?」

「消えたんじゃないんだよ。」

「??」

「それを見た瞬間、君は宇宙人に連れ去られたんだよ。
それで何かされて、UFOは去っていった。
町田に戻されて、時間がまた動き始めたから、(消えた)みたいに見えたんだね。
今日からは、すごいことができるに違いない。」

「・・・」

「・・・すごいことって?」

「くつしたを重ねたまま脱がないとか」

「・・・・・・・・・・・」

音がしない飛行機雲を見たのは本当なのだが、あとはもちろん小咄だ。
何がどう負けたのかわからないが、今回は自分の負けだと思った。

*****

ちなみに、アトリエでもう一度同じ話を土曜日スタッフのまっちゃんに話してみたら、
今日はもう帰ってええで、と言われた。

「熱あんねやろ?無理しいなや」

そのままくじけずにアトリエに長く通っている女子高生の女の子に同じ話をしたところ、

哀れみの目で、とうとうきたか。。。。と言われた。

「いつか来るとは思ってたけど。早かったよねボケ始まるの」

3度目の正直だ、と思い、アトリエ暦が一番長い深谷さんにも話をした。

彼女はすぐに、ぱっと顔をかがやかせて、
「えーー!いいなあ!!いま、ちょうど未確認生物関係の本、読んでいるんですよ。
そういうのがある、というのでも、ない、ていうのでもない中立の本なんです。
これがまた、いい本なんですよ。。。。」

話す相手をよく考えて話題を選ぶ。

会話の基本だな、と思った。