114. 大菩薩峠

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大阪に住んでいる母が遊びにきたので、妹とアトリエの長田くんと映画を見に行った。
都内の映画館で市川雷藏フェアをやっていて、ずっと興味があったからだ。

昔の漫画で、「じゃりん子チエ」という大阪の下町が舞台の漫画がある。
ホルモン焼き屋を経営する(?)小学生女子が主人公なのだが、
その女の子のお母さんが市川雷蔵が大好きだというくだりがある。
もの静かで控えめなお母さんが大好きな市川雷蔵って、
どんな人なんだろうなーと子ども心に興味を抱いていた。

大人になってから知った市川雷蔵は、思ったよりもワントーン声が低い、大人な声の人だった

映画「大菩薩峠」は敵討ちものだ。
市川雷蔵はおそらく悪役で、腕がたつのをよいことに、
大して用もなくてもどんどん人を斬り殺してしまう。
試合で雷蔵に兄を斬られてしまった、心正しい剣士の若者が相手役だ。

予備知識はなしだったのだが、とても楽しめた。
色々な人間模様がからみ合って、物語はどんどんもりあがっていく。

巨人の星で言えば、飛雄馬が足を高くあげて、これから大リーグボールを投げる感じだろうか。
色々なところで出て来た人物やエピソードも、
ここからきっと、すっきり一つに集約して落ちがつくのだ。。というまさにその時、
「完」という文字が入った。

え?
今?

終わり?

ものすごくびっくりしているのは我々とあと数名の比較的若年層の客だけで、
あとのお客さんはやれやれ終わった、という表情で帰っていく。

よく調べたら、3部作の一番最初を観たのだった。

消化不良になった妹は、帰宅途中で雷蔵が出ている、
眠狂四郎シリーズという時代劇DVDを借りてきた。

皆で夕食を食べながらDVDを観つつ、
「さっきの雷蔵は敵役だったから目のくまどりがすごかったんだね」
「くまどりないほうが格好いいね、やっぱり美男子なんだね」等々話していた。

母も一緒に夕食を食べていたのだが、妹が家に帰ったあと、
「あんたたちなんで片岡さんを「雷蔵」って言ってたの」と聞いた。

え?
今観てたの、雷蔵じゃないの?

よくよく聞いてみると、
「眠狂四郎シリーズ」は柴田錬三郎作の小説をもとにした
大人気時代劇で色々な人が演じているとのこと。
映画、テレビを合わせると6、7人の人が演じているらしい。

その夜、私たちがみていたのは片岡孝夫さんという俳優さん主演のものだったようだ。

無知は恐ろしい。

市川雷蔵を色々にまちがえた一日だったが、
雷蔵、雷蔵と連発している横で会話にノータッチだった母にも面白さを感じた一日だった。言ってくれよ。