112. あおきっくすが降りてきた

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4月から新しいメンバー体制になって4ヶ月が経とうとしている。
新しいメンバーでのアルケミストも落ちついてきた感じだ。

仲間に加わったメンバーは、男性がふたり、女性がひとりの 計3名だ。
偶然が重なって、アトリエにいらして下さることになった方ばかりだ。

そのうちのひとり、青木くんが参加することになった経緯も
そうだった。

青木春平くんは小学校高学年から中学校までアトリエに通ってきてくれていた人だ。
当時は「あおきっくす」と呼ばれていた。

デッサンの技術が高く、
純粋にものを見て、ていねいに考えるひとで、同じ時間帯に来ていた社会人の男性と
よく芸術話や人生話(?)に花をさかせていた。

4月のある土曜日の夕方に、新しい男性メンバーが
予定が変わり平日来られなくなる、ということが分かった。

平日に人が減ってしまうことになるので、
「どうしようか」と皆で話していたところ、
突然あおきっくすがアトリエにたずねて来たのだ。

玄関に出た深谷さんが爆笑しているので何だろうと出てみたら、
白い長袖Tシャツ姿のあおきっくすが半笑いで立っていた。

小学生だったころはいがぐり頭だったのだが、
目の前にいるあおきっくすはふわっとした長めの髪で、
背丈も伸び、体つきも顔つきもがっしりしていて、
一瞬誰だか分からなかった。

あまりの変貌ぶりに私も大笑いしてしまった。

7、8年ぶりに会うのだから変わっていて当然だし、
久々にたずねてきてくれた人を爆笑するのもどうかと思ったが、
なぜかお互い笑ってしまったのだ。

ひとしきりお互い笑ったあと、
「お茶でものんでいってよ」ということになった。

制作している方に混じってお茶を飲みながら、
あおきっくすはぽつりぽつりと話をした。

これまでのこと、今の暮らしのこと、
色々考えて、考えすぎて動けなくなっていたけれど、
何かアクションを起こしたい、というのが主な話だったと思う。

皆でふむふむ、と聞いていて1時間くらい経ったときだろうか。

「とにかく何かしたいんです」
「うーん、、今までの話をまとめると、
色々なひとと接することができて、身体を動かして働くところですよね。。。
何かないですかねえ」

とお互い見合った時に、その場のスタッフ全員が気がついた。

「。。。。あっ」
「あっ!」
「あー!」

「あおきっくす、アトリエに参加してみますか?」

「えっ」

「いや、今さっき、佐吉くんが平日来れなくなってしまって、
どうしようって話をしていたんです。
あおきっくす平日水曜日と月曜日って大丈夫ですか」

「大丈夫ですけど。。いいんですか」

「アトリエの仕事は、環境づくりが8割なんです。
あおきっくすは見習いの状態からスタートすることになると思いますし、
文化的な仕事っていうよりチームプレーの肉体労働なんですよ。
逆に、それでもいいですか」

「やります」

こういった経緯を経て、現在あおきっくすはアトリエで日々階段を掃き掃除したり、
ちびっ子と一緒に制作をしたりしている。

はじめはどうしたらいいかわからずフリーズしている場面もあったけれど、
今は、いっしょにいるとちびっ子がすごくリラックスする人として活躍中だ。

わたしたちは、あおきっくすが降臨したかと思ったくらいありがたかったが、
あおきっくすにとっても、アトリエに参加することがよいことであるとよいなあ、と思っている。