101. ゆうたろうくん

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先日、月曜日のちびっこクラスに通っていたゆうたろう君という男の子が、
アトリエに遊びにきてくれた。
シンガポールに引っ越す、ということでアトリエを卒業となったのだけれど、
日本に一時帰国するついでに寄ってくれたのだ。
ゆうたろう君は、小学校2年生から6年生まで通ってくれていた。
現在は中学2年生だ。
とにかく銃が好きで、絵でも銃、紙粘土でも銃、木工でも銃。。。
という銃三昧の制作をするひとだった。
クラスではお兄さん的存在で、
年下の子や新しく入って来た子のお世話をよくする人だった。

ゆうたろう君の制作はちょっと見ると、同じ銃ばかりをつくっているように見える。
でも、そうではない。
それまでは動かなかった部分を動くように工夫してみたり、
色にこだわりが出てきて何色も混ぜて納得する色をつくったり。。。
すきな「銃」を軸に、毎回工夫やこだわりが加わって、
制作の密度が上がって行くのだ。

わたしたちスタッフは、こういう時、
なるべく繰り返して制作する人の邪魔はしないようにする。
そのひとのなかで何かが発酵している可能性が高いからだ。

他の制作が思いつかなかいから同じものを繰り返し作ったり、
他のジャンルをやってみるのが怖いから得意分野を繰り返す、
みたいなマンネリ制作なら別だけれど、
本人が喜んでやっている「繰り返し制作」は横で見ているのが一番よいと思っている。
こういう時は待つのが仕事だ。

そういう意味では、何年も銃ばかりを持ち帰るゆうたろう君を
笑顔で待ったお母様はすばらしかったよなあ。。。と思っている。

頭でわかっていたって、「今度は他のものつくったら?」って
言いたくなるのがお母さんの人情だもの。。と思うからだ。

辛抱強く折々に色々な制作を提案し続けたスタッフの宇都宮先生もえらかった。
ひとつの銃が完成するたびに、
ゆうたろうくんに銃のバリエーションと、他の制作を提案していたからだ。

そんなゆうたろうくんは、ある日ふっと、画家のセザンヌの作品を模写して
以来、銃の他の制作もどんどんするようになった。
自分で納得するまで銃を作り、
その制作の中で色々な制作手法も身につけていったせいだろうか。
銃以外の作品も、ひとつひとつがとても完成度が高かったのが印象的だった。

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ゆうたろう君が遊びにきてくれた曜日は土曜日で、
彼を知っている人は少なかったけれど、スタッフはすっかり色めきたってしまった。
「おお~!ゆうたろう君久しぶり~!!」
「元気だった?」
「なんかすごくたくましい感じ。大人っぽくなったんじゃない?」
「背が伸びたんだよ」
「顔も大人っぽい感じだよねえ」
等々、一斉に話しかけるなか、
「あの。。。つまらないものですが。」
とゆうたろう君は静かにお菓子の箱を差し出してくれた。

みちがえるような大人の口上で、びっくりするやら
笑ってしまうやらで、制作時間だというのに大盛り上がりとなってしまった。
 
スタッフ以外は(?誰だろう?)という感じだったのだけれど、
以前ゆうたろう君と同じ月曜日に通っていた中学1年生の女の子、のんちゃんが、
土曜日クラスに移動になっていて、たまたま会えたので、ちょっと旧交をあたためられたみたいだ。

といっても、お休みが多くて生徒さんが少なかったのを幸いに、
彼等が小さい頃、アトリエの後片付けが終わったあとによくやっていた遊びの
割りばし鉄砲大会をしただけだ。
でも二人とも、割りばし鉄砲を持ったとたんにすっかり昔に戻ったみたいに生き生きして、
とてもおもしろそうだった。一緒に居た土曜クラスの子も参戦して、大盛り上がりだった。

深い話などしなかったし、きっと互いの近況も満足に話していないかもしれないけれど、
なんだかこういうのいいよな、と思う。