094. 着付けの病

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小さい頃から祖母はあこがれの人だった。
夏休みと冬休みは祖母の住む新潟で過ごすのが小学生の時の習慣で、
祖母と叔父叔母夫婦、従姉妹たちと合宿のような生活をしていた。
祖母はお茶の先生をしていて、訪ねて行った初日は皆にお茶をふるまってくれる。
にがい抹茶はわりあい好きだったが、長時間の正座と
古くなりすぎているお菓子がたまに出ることが悩みの種だった。

腐ったういろうがお茶菓子に出たときがあって、私はいまだにういろうは苦手だ。
祖母はふだんは畑で野菜や薬草、花を育てていて、
後ろにくっついて歩くと、「これは○○、これは○○、干して煎じるとあせもに効くよ」等々、
花や草の名前を教えてくれた。

普段は畑にいる、ふつうの田舎のおばあちゃんなのだが、
たまに東京へ出てくる時があった。

その時は淡いペパミントグリーンの着物をぴしっと着て現れ、
その姿がとても似合っていたので、「格好いいなあ」と思っていたのを覚えている。

20代後半、アトリエが軌道に乗らない時にしていたアルバイト先の女性で、
とても瑞々しい方がいらっしゃった。

何の時だったか食事をご一緒した際にその女性が渋い着物を凛と着こなしていて、
その姿が本当に美しかった。
たった1日のことなのに、祖母と同じようにいつまでも記憶に残った。

あこがれの祖母の影響か、アルバイト先のおくさんの影響かはわからないが、
それから何年かして自分もよろよろながら着付けをするようになった。
ちょっとできるようになると、練習したくなるのが人の常で、
「ホームページに新春らしい画像が欲しいから」と
リサイクルで入手した着物をアトリエの中学生くらいの人に
無理矢理着せるのが楽しみのひとつになっている。
道具もありあわせのものを使うし、
ぜんぜんきれいに着付けてあげることはできないのだけれど、
どの女の子も着物姿はきゅんとするくらいかわいらしい。

思わず、ホームページのためにしては膨大な数の写真を撮ってしまう。

アトリエが長い人は、着物を持ってうろうろする私の姿をみると
「また病気がはじまった。。」と言いつつ、つき合ってくれる。
今年は小学5年生の女の子がモデルとなった。

ああ、やはりとてもかわいらしい。