092. 雪の日

092
雪が降った。
朝はみぞれだったものが、みる間にぼた雪になり、
降りしきる雪で窓の外が真っ白になった。
雪国に生まれたからなのだろうか。それとも単に好みだろうか。
雪が降るだけで胸の底がとても落ち着く。
雪かきの大変さや、事故の多さも知っているはずなのに、
やっぱり雪はいいなあ、と思う。
目からも、耳からも、心からも、色々な雑音が消えていって、
静かに一人に慣れる気がする。
親しい人にはより親しい気持ちが湧いて、
用事もないのに電話をしたくなったりする。

どんどん白くなって行く窓の外を眺めながら、
大好きな小説家、内田百聞先生の随筆のなかのせりふを思い出した。
『問題が解決した訳ではない。
結び目がほどけないものはほどけないなりに、そのまま時間が過ぎて、
なんとなく落ち着くところにおちつくようになったのだ』

それを読んだ時は何があったわけでもないのだけれど、
なぜかすごく心にのこって、「ああ、そうだよなあ」と腑に落ちる気分になった。

雪も、時間と同じように、ものごとを静かに落ち着くところに落ちつかせる気がするな。

とか思っていたら、
風邪で寝込んでいる夫が「散歩に行きたい」と言い出した

「えっ。 風邪引いて寝てるのに??」
強く止めたが意思は固いようだった。

「じゃあ、引率します」

「君はだめ。風邪がよくなったばかりでひ弱だから」

「。。。風邪で寝ている人が、看病している人に言う
せりふじゃないでしょう。行くならついて行きます」

「えー。。しょうがないなあ。。。ちょっとだけだよ?」
全体的に何もかもが間違っているとは思ったが、
夫婦二人で厚着をして、みぞれに戻りつつある外に出かけて行った。

空気がきりっと冷たくて、火照る顔に気持ちがよい。
色々遊んで帰って来たら、服がびしょぬれになり、乾かしながら熱いぜんざいを食べた。
餅がアルミホイルにくっつきすぎだの、
どっちの餅が大きいだの言いあっていたら、
朝のいい感じなアンニュイな気分も、夫と自分の風邪も吹き飛んで、
元気なちびっ子のようになった。
やっぱり、雪はいいなあ、と思った。

足で作った顔
足で作った顔