090. 変わり目

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秋は忙しい。

暑さが続いて、夏の気分が抜けないまま薄着でいると、
空が夏とはちがった高さになっていて、朝にキンモクセイが香っていたりする。
街にハロウインの飾りを見て、ああ、秋がきたのだなと思っていると、
最近はもう、年賀状やクリスマスケーキのポスターが目立つ。

街やお店のものを見ていると、なんだか
首元を持たれて先へ先へと引きずられて行くみたいだ。

それと反対なのが、
階段に赤くなった柿の葉が落ちていたり、
月がへんに明るくてきれいだったり、
そういうのを見たり感じたりする事なのかなあと思う。
気になることがあったり、すごく忙しくしていると、
色々なことをスルーしたまま季節が変わってしまう。
それってもったいないかもな、と最近思うようになった。
 
少し前の話になるが、
10月半ば頃だろうか、久しぶりに雨が降って、朝、外に出ると
すうっとキンモクセイの香りした。
道を曲がるたびに、右、左、とふわっふわっと香ってくる。
目をつぶると、空気にきれいな色がついているみたいだった。
アトリエのちびっ子がお誕生日とのことだったので、
布で小さな袋を作ってキンモクセイの花を詰めた。
プレゼントのつもりだったのだが間に合わず、
仕方なく自分のエコバックに入れていたら日が経ってしまい、
しおしおになったその小さな袋は捨てた。
何日も経って、街のキンモクセイがすっかり散ってしまってから
そのエコバックを使ったら、強くキンモクセイが香った。
キンモクセイは好きなので、なんだかすごく得した気分だった。