089. 海からの贈り物

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むかしの飛行家にリンドバーグというひとがいて、
その奥さんが書いた、「海からの贈り物」という本がある。
内容は、年中いそがしく仕事や家庭のために
はたらいている女性が、
ちょっとだけ海にバカンスに出たときの日記のようなものだ。

アトリエの大人のひと、とくに主婦の方の制作を拝見していると、
この本をよく思いだす。

その本には、定期的に、しんとした時間や空間を持つことが、
ふつうの毎日を繰り返すなかではどれだけむつかしくて、
どれだけ大事か、ということを書いているくだりがある。
 

週に1回あるTV番組を見ながら、
「おっ、もうこの曜日か。。早いなあ」と思ったことはないだろうか。
アトリエでは、週に1回の制作をして頂いているのだけれど、
このスパンは、つまりそのような感じで、続けていくと意外と頻繁だ。
 
そうやって、週に1回アトリエで制作されている主婦の方は、
ちょっと少女っぽい人が多い。
服装が少女っぽいわけではなく、雰囲気が瑞々しい感じなのだ。
お会いしてお話しするのが楽しい。
話題は最近のできごとで面白かったこと、興味があって行ったイベント、作品のこと、
読んだ本やまんがのこと、等々。。多岐にわたる。
本やまんがの貸し借りもよくあって、ご紹介頂いてからはまってしまったものも多い。
 
お家に帰ればそれはもう、色々なことがあって、やることもあるのだと
思うけれど、彼女達からあまり、そういったことは感じられない。
たまーに困ったことなどを少し話して、ちょっとホッとして帰ることも
あるけれど、それはけっこうめずらしいことだ。

この場所、この時間はそういったものから離れて過ごすのだ、という
おだやかだけど、きっぱりした気分を感じるのは私の気のせいだろうか。

「遅刻します」「都合が悪くなったので○曜日に伺います」
等々、日々頂くメールからは、
彼女達が、決してひまでアトリエに通っておられるわけでないことが伝わってくる。

制作も、ゆっくりその時々に興味のあるものを制作される方、
目標を立てて、コツコツと勉強を積み重ねる方、
ひとつのモチーフを絵画で、彫刻で。。と色々な方向から表現される方と色々だけれど、
ひとつひとつの完成度がものすごく高いのは共通している。

それはやっぱり、しん、とした時間を制作のなかに見ておられるからなのかなあ、
と思ったりするけれど、
「もうこのマンガの続きが気になって!!一週間待ちわびてましたよ~」
と伺ったりすると、そんな予想は、ま、ただの予想で、
どんな楽しみ方でも、楽しんで頂けていれば、アトリエ冥利につきるよな~、と思ったりしている。