085. 炊き込みごはん

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デートはいつでも楽しい。
好きな異性とデートするのはもちろん、同性でも日時を決めて、
二人で過ごすのを楽しむのはデートだと思う。
手術のためにお休みして、復帰するまでに何人かの方とデートした。
上野の美術大学の卒業式の日に、大学内に入って散策してみたり、
教授に見とがめられてダッシュで逃げてみたり、
古い日本映画を観たり、
干し芋を食べながら連れ立っていけない映画を観てみたり、
新人落語家の練習寄席に行って、台詞を忘れてつまったりするのを眺めてみたり。。。
一人遊びだと、築地に行って観光客を眺めて切り干し大根を買ってみたりしていた。
外デートも面白いが、うちでご飯を食べたりするデートも楽しかった。
4、5日前から「どんなごはんにしよう?」と考えながらメニューを決めて、
何日かに分けて下ごしらえをする。
当日はごはんより会話がメインになってしまうのだが、
こういった時は、準備自体がもう娯楽なのだ。
時間がある時ならではの贅沢だ。

印象的だったのは、自宅でアトリエの方とごはんデートをしている時に、
箱嶋さんがいらした時だ。箱嶋さんは、ちびっ子のお母さまだ。
えだまめの入った炊き込みごはんと、優しい色のお花をお見舞いにお持ち下さって、
本当に嬉しかった。
「ご一緒にごはんをいかがですか?」とお誘いしたのだが、
ご用事の途中で寄られたとのこと、そのままお帰りになった。
デートは楽しく終わって、その夜、帰宅した主人と
昼の自分が調理した残りものと、頂いたまぜごはんを夕食に食べた。
ごはんは薄味で、ほんのりいい香りがして、
夫婦で「おいしいねえ」と言いながら食べた。
忙しい毎日だと、どうしても、素早く終わらせるのが目的で料理をしてしまうけれど、
そういうのじゃなくて、
なんだかごはんに入っているにんじんやごぼう達が、
にこにこ笑っているような感じの味がした。
デート用に作った自分の料理は華やかだけれど、でもこんなにおいしくはなかった。
うれしくて、不思議で、
その日のデートはもちろん楽しかったのだが、
そのあとに食べた炊き込みごはんの味が、なんだかいつまでも印象に残った。