078. あのころ

078
思うところがあって、絵本を出版した。
と、いうと格好がよいのだが、自費での出版だ。
原稿自体は13年前に出来ていた。
ちょうど、アトリエをはじめて間もない頃にこつこつ描いたものだ。

アトリエといっても、自分でアトリエですよーと言っているだけで、
実際はほとんど誰もいらっしゃっていなかったので、暇だったのだろう。
一番描き進んだのは夏だ。
色々な仕事が夏休みに入った1週間の間はほとんど24時間、
アトリエにいてそのお話のことばかり考えて過ごした。
うるさいくらいの蝉の声や、蚊取り線香の香り、
疲れてごろんと大の字に寝ころがったときの
天井の柄や、肩と背中に感じるひんやりした床など。。。。
そのときの記憶は体に残る感覚で、はっきり残っている。
何より、心の底から、ああ、幸せだなあ、と思っていた。
アトリエがほとんど誰もいないのに、焦るとか怖いなあとか
感じる事ができずに、心底幸せを感じていたのだから、
おかしいよなあ、と今思うとなんだか苦笑いする感じだ。

そんな風にして描いた物を、
読み直しては手を入れたり、
ほっぽらかしていたりしていたら、13年も過ぎてしまった。

もともとは友人に向けて書いたお話だ。

作者はクリスマスに出来上がったものをもらえた。

なんだか、幼なじみの女の子が
急におしゃれしてかわいくなって出て来たみたいな感じで、
ちょっと照れくさかった。