067. 人類は進化している

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制作の時間を一緒に過ごしていると、アトリエのちびっ子の皆さんはすごいなあ。。。とよく思う。
「昔はよかった。それに比べて今は。。。」というせりふは良く聞くけれど、
アトリエにいると、人類は確実に進歩している!と思ってしまう。

そう思ってしまう制作をするひとは本当に多いが、えいじくんもその一人だ。

えいじくんは小学2年生の男の子だ。アトリエに通いはじめてからは1年くらい経つ。

えいじくんは、ふだんは立体を中心に制作をしている。
実際に使用に耐えるサイズと強度の寺子屋風?長机を作ってみたり、
石膏で大好きな恐竜の化石を作ってみたり、ジャンルや材料は様々だ。

共通しているのはイメージが決まると超人的ともいえる粘り強さを発揮することだ。

低学年だったりすると、やりたいことは毎週変わる、といったことはまったく珍しくはない。
が、えいじ君はいったん作りたいものが決まると、何週でも制作を継続させることができる。
そして完成させた作品を、ものすごく大事にする。

ある日、えいじ君は、自作の机の強度を高めるために何本も釘を打っていた。

数本ならまだしも、1時間近くもこつこつと釘を打ち続ける作業は
当時小学1年生だったえいじ君には大変な作業のはずだった。

くぎ打ちで始まり、くぎ打ちで終わる地味な日が何週かに渡って続き、
あまりにくぎを消費するため、えいじ君が使っていた種類のくぎは
全部無くなってしまった。

違う種類のくぎを使ってもらうことになったのだが、
同じサイズでは石膏ボード用のくぎしか残っていなかった。

このくぎはリングくぎと言われる種類で、表面にでこぼことした
リング状の加工がしてあるため、表面がつるつるした普通のくぎより打つときの抵抗が俄然大きい。
打ってもなかなか入ってくれないくぎなのだ。

前に打っていたくぎとは違うけれど、と前置きしてはおいたものの、やはり打っても打っても入らない。
「おればか。。あーおれ、ばか。。」
とつぶやくえいじくんに、「いや、これはすごくむつかしいくぎなんだよ。
来週新しい、いつも打っていたくぎを買ってくるから、今日はもうやめよう?」
と立体担当の宇都宮先生が説明すると、
いや、やるとのことでもくもくと釘うちは続行された。

そのうち、えいじくんは大粒の涙をぼとぼと落としながら泣きはじめてしまった。

うまく行かないから悲しい、というよりは、
釘が打てない自分の技量がくやしくて泣いているのはよくわかった。

すすり泣きは号泣になり、まわりのちびっ子も心配して集まってきた。
「来週いつもの釘なら大丈夫だよ!」とフォローも入ったが、えいじくんは泣き続けた。

気の済むまで泣くと、別の作業に入るのかとおもいきや、
えいじ君は金づちを持ち直してくぎ打ちを再開しだした。

口をへの字にまげて、しっかり釘の頭をみて、着実にくぎを打っていく
えいじ君の姿は、「ちびっこの工作でしょ」とはぜったいに言わせない何かがあった。

ゆっくりとだがリング釘は製作中の机にめり込んでいき、
周囲の声援がかかるなか、5分強かけてえいじ君は釘を1本打ち終えた。

かなり疲れた様子だったけれど、
「・・・できたー」とつぶやいた顔は忘れがたい。

えいじくんはそれ以来、リング釘も楽々と打てるようになってしまった。

そして今日も、「おれきのう、にくとごはん食べ過ぎてお腹いたかったー」
とか言いながら、着々と制作を続けている。