063. かえるところ

063
小さい頃に引っ越して住むようになったのは、都内の小さな工場町だった。

町には小学校も中学校もひとつずつしかなかったし、
確か幼稚園や保育園の数も少なかったので、
けっこう大きくなっても、ケンカになると、
保育園時代までさかのぼって言い争ってしまうような土地だった。

そうやって、ケンカしている友達を「いいなあ」と思ってみていたことは
よく覚えている。

また他の土地に引っ越すまで、その町には11年近く住んだのだけれど、
結局なじめていたのかどうか、今でもよくわからない。

仲良しもいたし、大好きな人もいたし、楽しかったはずなのに、
不思議だと思う。

どこに住んでも、家族と一緒にいても、
お天気で、空がすごく青かったりすると、「かえりたいなあ」と思うときがあって、
自分でも変だなあと思っていた。

それから随分たって、アトリエをはじめて、
どうしてそんな事を思っていたのか、最近はわかったような気がしている。
今は、かえりたいなあと思うことは殆どなくなった。
かわりに、それとはすこし違った気持ちで、
やっぱりたまに、空を見たりしている。