047. さくら

047
桜が好きだ。

桜の入ったお菓子やまぜごはんを食べるのも好きだし、
咲く前の桜も、満開の時も、散り際だって好きだ。

どうしてこんなに好きなのかはわからない。
小さい頃はそんなに好きだったかなあ、と思う。

住んでいるところの近くに小さな公園には、たくさん桜の樹が植わっている。
今、まさに満開に向けてがんばっている感じだ。

朝にいつもその前を通るのだけれど、
自分も含めて、朝の道を行く人はみんな忙しそうで、
前を向いてしゃかしゃかと歩いている。
どの人も知り合いではないけれど、
毎日すれ違うので、顔はなんとなく覚えている。

今日も、桜を見ながら早足で歩いていたら、
あまり見たことのない初老のサラリーマン風の男性が
ゆっくりゆっくり、桜を見ながら歩いてきた。

時々立ち止まって桜を見上げるので、周囲の通行人はどんどんその男性を追いこしていく。

懐かしい人と会うような表情で、ちょっと首をかしげて、
眩しそうに桜を見ていた。

その表情と、桜の風景がとても素敵で、思わず足がとまってしまった。
なんだか映画を見ているような気がしたからだ。

あの男性は、どんなことを思って桜をみていたのだろう。

おなかすいたなー、とかではないことだけは、まちがいなしだ。