040. ピタコラスイッチ

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なかよしの二人の男の子がアトリエに来ている。

中学生になってからは、バスケットとサッカーと、と別々に運動部に入って忙しくなったので、
今は不定期にアトリエに通ってきている。

ふたりとも、作品も発言も、とてもおもしろい。

アトリエにはひとりでくるときもあれば、ふたりで来るときもある。
ふたり揃ったときの会話は絶妙だ。

「わかった、いまオレが欲しいのは、お前のぬくもりだったんだ」
「美ってなんだろうとかって、文化っぽいけど、実はもっとはげしいよね」
「今日おれは美に一歩ちかづいた!」

等々、「面白い」から「深い」まで、じつに幅広い会話が展開されている。

そんな二人も、学校生活は充実していて多忙なようで、
小学生時代には聞かれなかった、試験の話題もちらほら入ってくる。
そういう彼らをみていると、勉強ってとらえ方がむつかしいなあと思ったりする。

その日は二人で、怖い話や美術話などをしつつ、制作が続いていた。
アトリエが終わる時間を過ぎても楽しそうに制作しているので、
ちょっといたずら心を起こして、スタッフも大人の生徒さんも、
全員外に出かけて、二人にアトリエをクローズしてもらうことにした。

アトリエのクローズなので、電気も全て消さなければならない。
夜で、周囲は静かなので、かなりの肝試しだ。

鍵の処理を説明したあと、二人を残して外に出た。
お迎えにいらっしゃるおうちの方には、電話で連絡して、いきさつを説明した。
「脅してくださいね」とお話すると、笑って快諾してくださった。

しばらくして、クローズのチェックのためにアトリエに戻ってみると、
鍵が新聞受けからアトリエ内の奥に入るように、
定規や椅子やらを組み合わせて、からくりっぽい道がつくられていた。

鍵の行き先には、ガラスコップがあって、「ピタコラスイッチ」と書いた紙が貼ってあった。

残念ながら鍵はコップからは外れていた。
肝試しはできたかもしれないが、スイッチは、はいらなかったみたいだ。

(中学生で、しかもしっかりした二人だからできたイベント(?)です。ふだんはスタッフが掃除・火の元・施錠を確認してクローズになります。