037. 春一番

037
アトリエの桜のつぼみがふくらみはじめてきた。
雪やなぎはもう満開で、チューリップもつぼみが見えてきている。
クローバーもレンゲも、つぼみが毎日おおきくなっている。

この季節は、街全体がうきうきしているような気がして楽しい。

ひとり暮らしのときは、
咲き始める直前の夜に、あたたかいココアを買って、
近所の公園のベンチで1人お花見をするのが恒例だった。

満開の桜は友だちと楽しみ、
開花直前はひとりで、と何度も同じ桜をみていた。

夜の桜は、全体がほんのり紅色に染まっているように見える。
枝についた沢山のつぼみの色のためだ。

一年に一度の晴れ姿のために、
頬を染めて準備しているイメージが浮かんでしまう。
妄想なのだが、舞台の幕が上がる前の、妖しい感じにすごくきれいな人と
いっしょにお茶を飲んでいるような気分になる。

桜は咲き始めたなと思うともう満開になって、
あっという間に散ってしまう。
散る頃にはもう、小さな新芽が出ているので、
桜はきっともう、次の準備で心がいっぱいで、
咲かしてしまった花のことなんかには興味がないのでは、と思ってしまう。

ひとり暮らしの時みていた公園の桜は、いつのまにかなくなってしまった。
かわりに色々な場所で桜をみるようになった。

毎年桜をみているけれど、ひとりだったり、大勢とだったり、
しょんぼり見上げたり、わくわくした気分だったりとその年によって
思いはまちまちだ。

今年はどんな気持ちで誰と桜をみるのだろうか。
すごく楽しみだ。