028. 伝染する

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アトリエに、デッサンをしにきている女性がいる。
デッサンの基礎を押さえたいという目標設定だ。期間は大学入学まで。
時間がないのでちょっと詰め込み気味だけれど、がんばってもらっている。

彼女は一日に5~7時間近く一つのものに取り組んでいる。
どこかでひっかかっても、自分で納得するところまでは粘りきっている。

大人のクラスの時間にやってきて、描ききれず夕方の低学年のちびっ子が
中心のクラスまでずれ込むこともしばしばなのだが、それでもペースは崩れない。

本当にすごい集中力だなあと思う。

その日の彼女は質感の違うボールを描いていたのだが、
小学生のクラスの女の子がそんな彼女を見て、「わたしもやりたい」と言い出した。

面白いので、本人に断って、早速となりで描いてもらうことにした。

彼女の本気と集中ぶりがうつったのだろうか、小学生の女の子も、
いつもとは違う表情でもくもくと鉛筆でボールを描いていく。

まわりの子たちも、まったく別の事をしているのだけれど、どこか感じる所はあるのだろうか、
邪魔にならないようになんとなく移動して、場所を空けたりしている。

本気というものは伝染するのだなあ、と思ってなんだか嬉しくなった。

描きあがった2枚のデッサンは、
それぞれのペースでそれぞれに進化していた。
何よりも描き上げた二人の表情がとても素敵だった。

疲れてるけれど、やりきった!という感じ。
やりきったのだけれど、
まだここが満足いかない・・という感じ。

それが次の制作に繋がっていく。いいもの見せてもらったな、と思った。

この表情! “